式年遷宮を再び


一色 克美
2016.10.21.(金)

実は、3年前の今ごろは眠れない夜を過ごしていた。比喩的な表現ではなく、本当に眠れなかったのだ。どうも僕は焦りや緊張が表面に出にくいタイプらしく、いつものほほんとしているように見えるらしい。だが実際は、これは欠点なのだが、短気でプレッシャーに弱く、非常に後ろ向きな性格なのである。
それで「うまくいく気がしない」というのが3年前の今ごろの口癖になっていた。というのも、伊勢神宮式年遷宮のクライマックス「遷御の儀」の生中継が目前に迫っていて、その進行役を務めることになっていたからだ。特別番組「お伊勢さん」の第10回の放送で、三重テレビだけでなく、BSを含め全国各地の放送局で放送が予定されていて、ゲストには女優の檀れいさんを迎えることになっていた。
内宮前おはらい町のすし店にセットを組んでの生中継。なにしろ20年に一度の儀式なので、神事の流れを知っているのは解説をお願いした皇學館大学の清水学長だけ。しかも民放では異例のCMなしの生放送。準備段階でも不確定要素が次から次へとあらわれ、当日になっても詰め切れていない部分がいくつかあった。
僕は、足かけ10年にわたって式年遷宮を取材していたが、実は、クライマックスの瞬間は、御神体が遷る場面が見られる正宮前での取材を希望していた。それで「10年取材して最後の瞬間が見られないなんて嫌だ」とダダをこねまくった挙句に、番組の司会が決まった後も、不安からかなり「こじらせた」状態だったのだ。

本番直前、照明が大きな音を立てて倒れかけるというトラブルがあった。スタッフが受け止め大事には至らなかったが、実は、これで開き直った。「まぁ、予期せぬことはあるだろうけど、やるだけやろう」と、生放送に臨めたのだ。
番組冒頭でいきなり「てにをは」を間違えるミスもあったし、遷御を落ち着いて見られないほどバタバタだったけれど、なんとか生放送を終えることができた。ホッとしてへたり込みつつ「遷御を間近で見るのは20年後まで取っておきます」くらいの軽口は出るようになった。
高校野球の取材をしていて、当たりの止まっていた4番バッターにホームランが出て、話を聞くと「開き直って打席に入りました」なんて答えが返ってきたりする。本番を終えて僕は「あ、この感覚ね」と思ったりした。

あれから3年がたつ。当時の番組を見ると、自分自身の反省点ばかり気が付いてしまうのだが、伊勢神宮の地元の局として、式年遷宮を全国に発信できたことは嬉しく思う。あの頃に比べれば、参拝者数は程よく落ち着いてきたが、相変わらず、伊勢神宮や伊勢志摩のメディアへの露出は多い。
先日もキー局やNHKの番組で「映像提供:三重テレビ」の文字が見られた。過去に撮り貯めた貴重な映像の数々がお役に立ったようで、全国ネットで放送されるというのも、なかなかいいものである。さらに、海外でも僕がディレクターを務めた「時を紡いで」のシリーズが放送されている。どんな人が見てくれるのか想像するだけで楽しい。

それで、僕がぜひ見てもらいたいと思っているのが、DVD「お伊勢さん」だ。
伊勢神宮や式年遷宮について、さまざまな視点で描いている10本の番組のほか、「特典映像」も収録されている。遷宮諸祭のふり返りや、伊勢神宮で行われている一年の神事、内宮と外宮の遷御の儀が収録されている。そして、某番組で「貴重な映像をご覧いただきましょう」とのナレーションとともに、「映像提供:三重テレビ」の映像がじっくりと放送された宇治橋の架け替えの様子も、さらにじっくり見ることができる。(某局さん、あんなにたくさん映像を使ってくれて、全国の皆さんに見ていただけて、嬉しく思います)
時間がたっても、古くなる内容ではないので、20年間楽しんでもらえると思う。どうぞ、お買い求めください。

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