消えたコウナゴを追う


一色 克美
2017.5.24.(水)

あくまで噂話だが、今年の春、津市北部や鈴鹿市では高血圧で病院を訪れる人が減っているという。その理由は、伊勢湾のコウナゴが禁漁になったから。
塩分の多いコウナゴの佃煮を食べる人がいないので、例年より患者が少ないということなのだろうが、これはあくまで噂話。
実際のところ、コウナゴには、高血圧や動脈硬化の予防に有用な成分も含まれるから、単純に「コウナゴ=高血圧」ということでもないのだろうが、この噂からわかるのは、いかにコウナゴが地域の人に食されているか、ということ。
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コウナゴ漁は、伊勢湾で最も大規模な漁だ。2隻の船で網を曳き、付随するレーダー船や運搬船とともに一段となって魚を追う。近年、漁獲量の増減は激しいが、三重県が全国シェアの2位となったこともある。大漁に沸いた年には水揚げ金額が10億円を超えた年もある。
あわせて、加工も盛んで、天日干しや佃煮作りは、津市や鈴鹿市の地場産業になっている。春先に、海岸沿いに作られた棚に、釜茹でしたコウナゴを干す姿は春の風物詩だ。
その風景も、この2年見られない。
実は、伊勢湾のコウナゴ漁は去年と今年、禁漁になった。伊勢湾内のコウナゴの数が極端に少なかったためで、漁業者が協議して自主的な禁漁を決めたのだ。今年の漁を諦めることで、親となるコウナゴを少しでも残し、来年の産卵に期待しようという決断。

三重テレビニュースウィズでは、年明けの調査段階で、コウナゴの数が少ないことを掴み、2年連続の禁漁の可能性をいち早く報じてきた。その後も、漁業者による試験操業に乗船取材したり、加工業者の声を聞くなど、取材を継続してきた。
そして、今回、これまでの取材をまとめる形で放送することになった。
漁業者も加工業者も、コウナゴ漁での収入は、年間収入の3割程度を占める。その大きさだけでなく、その年の最初の漁となるコウナゴには、特別な思い入れがあるのだという。
しかしながら、自主的な禁漁に、国や県の直接的な支援はない。「台風が来たり大雪が降って田んぼや畑が被害を受けたら助けてもらえるのにんあぁ」とボヤく漁師の気持ちもわからなくはない。

放送日の5月31日は、禁漁が終わる日にあたる。
今度はイワシの漁ができるかどうか判断するというタイミングで、なんとも先の見通しが不安定な中での放送になるが、漁師や加工業者の思いを少しでも伝えられればと思う。なお、コウナゴという魚についても興味を持ってもらえるはずだ。


5月31日(水) 20:00〜20:55
春は何処へ〜伊勢湾 消えた春告魚〜
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