悲しき回遊魚


一色 克美
2017.8.28.(月)

先日、志摩市にある三重大学の水産実験所に行った。
生物資源学部の2年生が臨海実習をしていて、この日は英虞湾に仕掛けられた定置網にかかった魚を同定する実習が行われていた。
まずは、実習船で御座漁港まで行き、漁師さんから魚を分けてもらう。
今年はカンパチが豊漁だそうで、学生たちは水揚げの様子を見学し、商品にならない魚を中心にクーラーボックスいっぱいの魚をもらう。
学生たちは、当然のことながら魚の知識が豊富で、見たことのない魚でも次々と名前や特徴を紹介してくれた。僕も釣りが好きなので大変に面白かった。

それで、ふと岸壁から海を見ると、鮮やかな青い色の小魚が群れで泳いでいるのが見えた。キラキラと美しい魚なので、そばにいた学生さんにたずねると「あ、スズメダイの仲間ですね。死滅回遊魚って言うんです」という。「死滅…回遊魚?」「ええ、黒潮に乗って南の海から運ばれてくるんですが、冬の寒さに耐えられず死んじゃうんです」「あー」「1年は生きられないんです」

なにがどうということはないのだが、『死滅回遊魚』というのは心に刺さる言葉だ。
回遊魚的な生き方に憧れる気持ちのある僕だが、きっと、温かい流れに乗った先に待っているのは、寒い冬なのだ。嗚呼、悲しき死滅回遊魚。
帰りの船の中、カメラマンと2人で「死滅回遊魚ね」「死滅回遊魚か」とつぶやきあった。


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実習船にて。学生さんたちの2倍生きていながら少しも回遊できていない残念な表情
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