デスク席から(40)「故郷への思い」



カテゴリー:デスク席から
2017.12.13.(水)

 お寺の階段を1段上がるのもゆっくり、ゆっくり…。
 先月下旬、ある夫婦が津市に来ました。いや、「帰ってきた」と言った方がよいでしょう。川北為俊さん(83)夫妻です。
 川北為俊さん=為(ため)さんは津市出身ですが、ハンセン病にかかったことを理由に、三重を離れざるをえなくなりました。らい予防法という法律があったからです。為さんは22歳の時、岡山県の離れ島(当時)にあったハンセン病療養所、長島愛生園に来ました。
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<ハンセン病療養所長島愛生園>

 その後、病気は治ったものの、法律や社会の偏見などから故郷に帰ることはできず、療養所で70年を過ごしてきました。
 為さんは個人的に、あるいは三重県主催の「里帰り事業」の一環として三重に帰ってくる機会はありましたが、足腰が弱ってきたことから「最後になるかもしれない」と位置づけた今回の帰郷でした。
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<三重県出身の川北為俊さん>

 先祖のお墓参りでは「こんなにヨロヨロしたのが来て驚いているのでは」と話し、幼少期を過ごした津市内の自宅跡では複雑な表情を見せました。当時の様子をとてもよく覚えていたことにも驚きました。
 為さんがもし病気になっていなければ、もし隔離を定めた法律がなければ、そしてもし法律に明確な退所規定があれば、違う人生を歩んでいたことでしょう。
 「法律」の役割や「人の心」のありようを考えさせられました。

 「差別するのは人間だけだ」と言ったのは、同じく長島愛生園で暮らしていた田端明さん。(津市一志町出身)
 私が初めて愛生園にお邪魔した平成14年にインタビューさせてもらった時も、63年ぶりに帰郷を果たし地元で講演をした時も、強調していた言葉です。
 その田端さんが今月4日にお亡くなりになりました。享年98。
園内で行われた葬儀には、長年交流を持つ人や、帰郷をサポートしたグループなど、三重県の人たちも参列していました。
「差別するのは人間だけ」…でも「人間だからこそできることがある」そう言った人もいました。
                       【終】

※「三重テレビ ニュースウィズ」では、12月21日(木)の特集で川北さんの帰郷の様子を紹介。
 また療養所の日常などを紹介するドキュメンタリー「大ちゃんと為さん〜あるまちの風景〜」を12月30日(土)正午から放送します。
記事URL | 投稿者:小川 秀幸|コメント(0)