オリンピックと同じくらい大切な…


一色 克美
2017.1.17.(火)

10年前、誰が想像しただろう、わずか10年後に、この大会からオリンピック選手が誕生することを…。

今月4日、紀宝町で開かれた五輪報告会。彼女は「美し国三重市町対抗駅伝が私の原点」と語った。彼女の名前は高見澤安珠。リオ五輪3000m障害の日本代表だ。
10年前に、僕は彼女を取材している。熊野川の河川敷で行われていた紀宝町チームの練習会。でも、当時小学6年生だった彼女のことは、実はまったく覚えていない。覚えているのは、「たかみざわあんじゅ」という、フルネームで呼んだ時の響きの良さだけだ。
次に彼女のことが気になったのは、4年後。彼女が津商業高校に進学していることを知った時だ。津商業の陸上部は駅伝の強豪で、つまり彼女が本格的に陸上に取り組み、おまけに県最南端の紀宝町から、覚悟をもって進学したであろうと想像した時だった。
もともとテニス部だった高見澤選手が、第1回の美し国三重市町対抗駅伝をきっかけに中学で陸上部に入ったことは、その後の取材で知っていたが、少なくとも中学時代は注目される存在ではなかった。
当時、津商業の監督に取材をしたスタッフは「体が柔らかい。将来は800mか、もしくは競歩の選手として期待できる。まだ1年生だから、どう成長するかわからないけど」といった内容のコメントを伝えてくれた。その期待通り、高見澤選手は800mの三重県高校記録を更新するなどしたが、東海大会では入賞までで、全国大会で活躍することはなかった。
その間、美し国三重市町対抗駅伝には毎年出場し、町の部で区間賞をとる活躍を見せた。陸上の競技人口が少なく、成績の奮わない紀宝町チームにあって、高見澤選手は前のチームとの差を一気に詰めてくれるエースだった。

そんな高見澤選手の才能と努力が開花したのは松山大学入学後。3000m障害に取り組むと、わずか1年で国内を制し、2年で五輪切符を掴んだのだ。3000m障害は35個のハードルと水濠を超えるハードな競技で、初めて走った時には「もうこんなキツイのやりたくない」と思ったそうだ。それでも「走ることが好きだから全力で」と、練習を重ねた結果がオリンピックに結びついた。

去年、高見澤選手は初めて市町対抗駅伝に出場しなかった。理由は海外遠征の日程と重なったためだった。海外の選手と戦う中で20歳を迎えた彼女は、新成人代表としてあいさつした成人式で、「五輪出場が夢」と語った。実は、彼女が見据えていたのは4年後の東京五輪だったのだが、成人式からわずか半年後には日本選手権に優勝し、リオへの切符を手にすることになる。
6月にインタビューした時には「世界の強い選手と肩を並べて、今の自分がどこまでやれるか試したい」と話していた彼女。リオでは、海外選手の壁に跳ね返されたが、先頭に立ってレースを引っ張る積極的な走りは、臆さずに世界に挑むものだった。

10年前、区間7位でタスキをつないだ小学6年生の彼女は「私って意外と走れるんだな」と思ったそうだ。そして、10年後の彼女は「この大会がなかったら、今の私はなかった。だから、市町対抗駅伝はオリンピックと同じくらい大切なんです」と語る。その言葉通り、今年も高見澤選手は紀宝町代表として大会に出場する予定だ。日の丸をつけて世界に挑んだ五輪ランナーが、今度はふるさとのユニフォームでタスキをつなぐのだ。

三重テレビでは、1月23日から、「ニュースウィズ」の中で、各市町チームの紹介を放送する。もしかすると、そのなかに将来の五輪選手が隠れているかもしれない。輝きを放つ前の原石を探すのも楽しみ方のひとつだ。

もうひとつ。中学で陸上の楽しさを知った高見澤選手は、チームメイトにだけは「オリンピックに出たい」と打ち明けていたという。「野口みずき選手みたいに、オリンピックに出たい」と。
今年の大会には、ゲストとして野口さんも登場する。金メダリストが、ふるさとの後輩ランナーたちに、どんなメッセージを贈るのかも楽しみだ。

★第10回美し国三重市町対抗駅伝★放送日時
2月19日(日)
8:15〜11:30  美し国三重対抗駅伝第1部(※今年は15分拡大)
20:00〜22:45 美し国三重対抗駅伝第2部(※ダイジェスト)

三重テレビ放送駅伝HP http://www.mietv.com/ekiden2017/
三重テレビ放送☆第10回美し国三重市町対抗駅伝☆チーム紹介
※「三重テレビ ニュースウィズ」内にて放送(1月23日から)
平日17:40〜18:00 / 21:55〜22:15 (1日2回放送)
※放送日が変更になる場合があります。
記事URL| 投稿者:一色 克美